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菓子製造業許可の取り方|開業前の実務Q&Aを一挙解説

菓子製造業許可は食品衛生法第55条に基づく許可で、申請手数料は14,000〜21,000円、審査期間は2〜3週間。食品衛生責任者の確保とHACCP対応が開業準備の核心。

許認可ナビ編集部·

この記事でわかること

この記事では、菓子製造業許可の取得を検討しているケーキ屋・パン屋・和菓子店・通販菓子事業者向けに、申請の実務を Q&A 形式で解説します。

  • 申請手数料:14,000〜21,000円(自治体により異なる)
  • 審査期間:2〜3週間(施設検査通過後に許可証交付)
  • 許可期間:5〜8年(期間満了前に更新申請が必要)
  • 食品衛生責任者の確保・施設整備・HACCP 対応の3ステップが開業準備の核心
  • 自宅工房・ネット販売・アイスクリーム兼業など「よくある実務の疑問」を12問以上収録
  • 無許可営業は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(食品衛生法第82条)

菓子製造業許可が必要なケース・不要なケース

菓子を「製造して販売する」行為には、食品衛生法第55条第1項および同施行令第35条に基づく菓子製造業許可が必要です。

許可が必要な主なケース:

  • ケーキ屋・洋菓子店・和菓子店で自店で菓子を製造販売する場合
  • パン製造工場・菓子工場として卸売・小売向けに菓子を製造する場合
  • テナントベーカリー・パティスリーで店内厨房での製造を伴う場合
  • EC サイト・通販で自家製菓子を製造販売する場合(自宅工房を含む)
  • キッチンカーで菓子を製造しながら販売する場合

許可が不要なケース:

  • 包装済み菓子の仕入れ販売のみ(製造を伴わない)→ 営業届出のみ
  • 店内で消費する菓子のみで持ち帰り販売なし → 飲食店営業許可の範囲

ポイント 「製造」と「販売」を両方行う場合に許可が必要。仕入れ・再販のみなら不要。境界が曖昧な場合は管轄保健所に事前確認するのが確実です。

許可が取得できないケース(欠格事由と施設基準未達)

以下のいずれかに該当する場合、菓子製造業許可は取得できません。

欠格事由(食品衛生法第57条):

  • 食品衛生法・同法に基づく命令で罰金刑以上に処せられ、2年を経過していない
  • 食品衛生法違反で許可を取り消されてから2年を経過していない者(法人の場合は役員を含む)

施設基準未達(保健所検査で不合格になる主な理由):

  • 住居部分と製造場所が明確に区画されていない
  • 手洗い専用設備(足踏み式・センサー式が推奨)がない
  • 原材料・製品の冷蔵保管設備が基準を満たさない
  • 廃棄物処理設備が不十分

重要 施設基準は自治体により細部が異なります。着工前に必ず管轄保健所に設計図を持参して「事前確認」を行ってください。工事完了後の手直しは費用と時間がかかります。

申請前の準備:3つの核心

食品衛生責任者の確保

菓子製造業では、施設ごとに食品衛生責任者を1名置くことが義務付けられています(食品衛生法第48条)。

以下のいずれかで食品衛生責任者の要件を満たします:

  • 製菓衛生師(菓子製造業には最も直結した資格)
  • 調理師・栄養士・管理栄養士(いずれかの免許保有者)
  • 食品衛生責任者養成講習会の修了者(都道府県が主催する1日6時間の講習。実務経験不問)

資格がない場合は、講習会の申込から修了まで1〜2ヶ月程度かかるため、早期に手配が必要です。

施設・設備の整備(保健所基準)

菓子製造施設は、以下の設備基準を満たす必要があります。自治体により細部が異なりますが、共通する主要基準は次の通りです:

  • 専用の製造場所(住居スペースとの完全区画。戸・壁・カーテンで仕切ること)
  • 専用手洗い設備(消毒設備付き。ペダル式・センサー式が望ましい)
  • 原材料・製品保管設備(冷蔵・冷凍の区分保管。適切な温度管理設備)
  • 廃棄物処理容器(ふた付きの専用容器)
  • 従業員用更衣・手洗い設備(製造場所と分離)

重要 保健所では「施設の構造設備平面図」と「動線図」の事前確認を受け付けています。着工前の相談で設計ミスを防ぐことが、最も費用対効果の高い準備です。

HACCPに沿った衛生管理の準備

2021年6月の食品衛生法改正により、すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました(食品衛生法第50条の2)。

小規模事業者(概ね50人未満)は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」として、簡易的な対応が認められています:

  • 業界団体が作成した手引書に従った衛生管理計画の策定
  • 日々の温度管理・洗浄消毒・ネズミ対策等の実施記録の保管

厚生労働省・各業界団体のウェブサイトに菓子製造業向け手引書が無料公開されています。

必要書類一覧(個人申請)

保健所に提出する書類は自治体によって若干異なりますが、以下が共通の必要書類です。

書類名入手先・備考
営業許可申請書保健所の窓口 or 自治体HPからダウンロード
施設の構造・設備平面図(2部)申請者が作成。厨房レイアウト・設備配置・動線を記載
食品衛生責任者の資格証明書の写し製菓衛生師免許・調理師免許等 or 講習修了証
水質検査成績書(井戸水使用の場合のみ)登録検査機関が発行。水道水使用なら不要

申請書は保健所窓口で受け取るか、各自治体のウェブサイトからダウンロードできます。提出前に保健所担当者に書類の確認を依頼すると、記入ミスによる再提出を防げます。

食品営業許可申請書・営業届 記載要領(許可・届出共通)
食品営業許可申請書・営業届 記載要領(許可・届出共通)出典:埼玉県
食品営業許可申請書 裏面の記載例(施設構造・設備の図面)
食品営業許可申請書 裏面の記載例(施設構造・設備の図面)出典:埼玉県
営業施設の基準の概要(菓子製造業)+ 平面図記載例
営業施設の基準の概要(菓子製造業)+ 平面図記載例出典:北九州市

必要書類(法人申請の追加書類)

法人として申請する場合は、個人申請の書類に加えて以下が必要です。

書類名備考
登記事項証明書(履歴事項全部証明書)法務局発行。発行から3ヶ月以内のもの
定款の写し事業目的に「菓子製造業」が含まれていること

注意 定款の事業目的に「菓子製造業」の記載がない場合は、定款変更手続きが必要になります。法人設立後に確認してください。

申請書の記入ミスが多い箇所

保健所の担当者がよく指摘する記入ミスをまとめます。事前確認で防ぎましょう。

よくある記入ミスと対策:

  • 「営業の種類」欄:「菓子製造業」と正確に記入。「菓子販売業」「飲食店営業」と混同しやすい
  • 「食品衛生責任者」欄:資格の種類と資格番号を正確に記載。資格証のコピーと照合する
  • 施設平面図の縮尺:1/50〜1/100が標準。縮尺の記載漏れが多い
  • 設備の寸法記載漏れ:冷蔵庫・シンク・作業台のサイズは必ず記入
  • 申請者の住所:法人の場合は「法人住所」と「代表者住所」の両方が必要なことがある

不明な点は保健所への事前相談で確認することを強く推奨します。担当者は相談を歓迎しています。

申請の流れ(STEP1〜5)

STEP 1:事前相談(1〜2週間前)

管轄保健所に施設の設計図を持参し、施設基準・設備基準への適合について担当者に確認を受けます。この段階で指摘を受けて修正できれば、検査不合格によるやり直しを防げます。

STEP 2:食品衛生責任者の確保

製菓衛生師・調理師等の有資格者がいない場合は、食品衛生責任者養成講習会を受講して資格を取得します。講習は各都道府県の食品衛生協会が主催(受講料は約1万円、半日〜1日)。

STEP 3:申請書の提出

書類一式を管轄保健所窓口に提出します。申請手数料(14,000〜21,000円)を窓口で支払います。オンライン申請に対応している自治体も増えています。

STEP 4:施設検査(提出から約1〜2週間後)

保健所の担当者が施設に来訪し、基準適合の確認を行います。検査前に再確認チェックリストで設備の動作・清潔さを確認しておきましょう。

STEP 5:許可証の交付・営業開始

検査通過後、許可証が交付されます。許可証を受け取るまで営業(製造販売)を開始することはできません。許可証は施設内の見やすい場所に掲示する義務があります。

費用と審査期間のまとめ

項目自分で申請行政書士に依頼
申請手数料14,000〜21,000円14,000〜21,000円(実費)
行政書士報酬49,800円(目安)
合計費用14,000〜21,000円65,800〜68,800円
審査期間2〜3週間5〜10日(代行の場合)
書類準備自分で全て準備行政書士が作成
  • 申請手数料は都道府県・自治体によって異なります(例:東京都は21,200円、大阪市は16,000円)
  • 許可期間は5〜8年(自治体により異なる。東京都は8年、大阪府は5年など)
  • 期間満了前に更新申請が必要。更新時にも改めて施設検査があります

注意 許可期間満了後も営業を続ける場合は、満了日の1ヶ月前までに更新申請が必要です。更新を失念すると失効となり、再申請が必要になります。

よくある失敗パターン5選

菓子製造業許可の申請で実際に起きた失敗パターンをまとめました。事前に知っておくことで回避できます。

失敗1:施設検査で不合格 → 工事のやり直し 保健所への事前相談なしに内装工事を進めた結果、手洗い設備の位置や区画方法が基準を満たさず、工事のやり直しが発生。コストと時間が2倍になる典型的な失敗です。着工前の保健所事前相談は必須

失敗2:食品衛生責任者の講習に間に合わない 開業準備が進んだ段階で食品衛生責任者養成講習会を申し込んだが、定員オーバーで数ヶ月待ちに。講習会は年に数回しか開催されない地域も多いため、準備初期に受講申込を済ませること。

失敗3:自宅工房で許可が下りない 「住居兼工房」のマンション・賃貸物件で申請したが、住居部分との区画が不十分として不合格。賃貸の場合は管理会社・オーナーへの用途変更確認と、区画方法の事前相談が必要です。

失敗4:アイスクリームを菓子製造業許可で販売しようとした アイスクリームは「アイスクリーム類製造業」として別許可が必要。知らずに製造・販売を始めてしまうと無許可営業となります。商品ラインナップを確定させてから必要な許可を確認しましょう。

失敗5:許可証の掲示を忘れた 許可証は施設の見やすい場所への掲示が義務付けられています(食品衛生法第54条)。検査後に許可証を受け取ったまま引き出しに入れておいた結果、立入検査で指導を受けるケースが報告されています。

実務Q&A①:自宅・ネット販売・他の許可との関係

Q1. 自宅の一部を工房にして菓子を販売できますか?

A. 可能ですが、保健所の施設基準を満たすことが前提です。住居部分との完全な区画(壁・扉による分離)、専用の手洗い設備専用の冷蔵設備が最低限必要です。マンションや賃貸物件の場合は管理規約・賃貸契約での用途制限も確認してください。事前に保健所に相談しながら設計するのが最善です。

Q2. EC サイト・通販で自家製菓子を販売する場合、許可は必要ですか?

A. 菓子製造業許可が必要です。製造場所(自宅工房を含む)が保健所基準に適合していれば、EC・通販・クリーマ・minne 等でも販売できます。加えて、食品表示法に基づくラベル表示義務(原材料・アレルゲン・賞味期限・製造者・内容量等)への対応が必須です。

Q3. キッチンカーで菓子を製造しながら販売する場合は?

A. キッチンカー(移動式販売)の場合、施設の所在地の保健所で菓子製造業許可を取得する必要があります。加えて、各出店エリアの自治体への届出や許可が必要な場合があります。製造は固定施設で行い、キッチンカーは「販売のみ」とする形式も選択肢の一つです。

実務Q&A②:設備・資格・HACCP に関するよくある質問

Q4. 製菓衛生師の資格がなくても開業できますか?

A. できます。食品衛生責任者の要件は製菓衛生師・調理師・栄養士等の有資格者でなくても、食品衛生責任者養成講習会の修了で満たせます。講習は各都道府県の食品衛生協会が開催(半日〜1日、受講料約10,000円)。有資格者がいる場合はその方を食品衛生責任者として届け出れば、追加の講習は不要です。

Q5. アイスクリームも作りたい場合、菓子製造業許可だけでよいですか?

A. 不十分です。アイスクリーム・ソフトクリームは**「アイスクリーム類製造業」として別の許可が必要です(食品衛生法施行令第35条)。冷凍スイーツ(フローズンデザート等)は「冷凍食品製造業許可」**が必要になる場合があります。菓子製造業許可との兼業申請は可能ですが、製造区画を分けることを求められる場合があります。

Q6. HACCP 対応のために特別な設備や認証は必要ですか?

A. 小規模事業者(従業員50人未満が目安)には「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」として、簡易的な対応が認められています。ISO認証や特別な設備投資は不要です。業界団体(全国菓子工業組合連合会等)が公開している手引書に従って衛生管理計画を作成し、日々の実施記録(温度記録・洗浄記録等)を保管すれば基準を満たします。

実務Q&A③:更新・変更・廃業・複数店舗に関するよくある質問

Q7. 許可の更新手続きはいつ行いますか?

A. 許可期間(5〜8年)の満了日の1ヶ月前までに更新申請を行う必要があります。更新時にも施設検査があります。満了日を過ぎると許可が失効し、再申請が必要になるため、許可証の期限を管理カレンダーに登録しておくことを推奨します。

Q8. 製造場所を移転・改修した場合、許可の再申請は必要ですか?

A. 移転の場合は新規申請が必要です。改修(内装変更・設備追加等)の場合は、変更内容によって「施設の構造設備変更届」の提出が必要になる場合があります。工事前に保健所に変更内容を相談し、再検査が必要かどうかを確認してください。

Q9. 廃業した場合の手続きは?

A. 廃業した場合は、保健所に廃業届を提出する必要があります(食品衛生法第57条の2)。提出期限は廃業後速やかに(自治体によって異なるが概ね1ヶ月以内)。手続きを怠ると継続して許可保有者として記録され、後の手続きで問題になる場合があります。

許可取得後の義務

許可を取得したら終わりではありません。以下の義務を継続的に守ることが求められます。

許可証の掲示義務

許可証は施設内の客や監督官庁から見やすい場所に掲示する義務があります(食品衛生法第54条)。フレームに入れて壁に掲示するのが一般的です。許可証の写しを保管しておくことも推奨します。

重要 許可証を掲示しない場合、立入検査で指導を受けます。繰り返し違反すると行政処分の対象になる場合があります。

更新申請(5〜8年ごと)

許可期間満了前に更新申請が必要です。更新時にも施設検査があります。許可証に記載された有効期限を必ずカレンダー管理してください。

変更届の提出

以下の事項が変更になった場合は、保健所に変更届を提出する必要があります。

  • 氏名・住所・代表者の変更
  • 食品衛生責任者の交代
  • 施設の構造・設備の変更

廃業届の提出

廃業した場合は速やかに保健所へ廃業届を提出してください(食品衛生法第57条の2)。

HACCPに沿った衛生管理の継続

日々の温度管理・洗浄消毒・害虫対策の実施記録を保管し続けることが義務です。立入検査の際に記録の提示を求められます。

まとめ:菓子製造業許可の取得を成功させるために

菓子製造業許可の取得で成功するための核心は、着工前の保健所事前相談食品衛生責任者の早期確保の2点に集約されます。

申請の全体像を整理すると:

  • 費用:申請手数料 14,000〜21,000円(自治体による)
  • 期間:施設完成から許可証交付まで 2〜3週間
  • 有効期限5〜8年(更新制)
  • 許可証掲示:取得後は施設内の見やすい場所へ掲示義務

自宅工房・EC 販売・キッチンカーなど、販売形態によって追加の届出や許可が必要な場合があります。また、アイスクリームや冷凍菓子を扱う場合は別許可が必要です。商品ラインナップを確定してから必要な許可を一括確認することをおすすめします。

書類準備・施設設計・HACCP 対応に不安がある方は、食品営業許可を専門とする行政書士への相談が有効です。初回相談は無料の事務所も多く、スケジュールや費用感を事前に把握できます。

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許認可ナビ編集部

行政書士・法務専門家と連携し、許認可・行政手続きの正確な情報を提供しています。掲載内容は官公庁の公式情報をもとに作成し、定期的に更新しています。

最終更新:2025年5月2日

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