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労働保険の加入届の出し方|必要書類・費用・申請手順まとめ
労働者を1人でも雇用したら雇用日から10日以内に届出が必要。官庁手数料無料。保険関係成立届を所轄の労働基準監督署に提出し、雇用保険対象者がいる場合はハローワークにも届出。概算保険料は成立日から50日以内に納付。
この記事でわかること
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の加入届が必要なケースと不要なケース
- 届出に必要な書類と、労基署・ハローワークへの提出手順
- 提出期限:雇用日から10日以内(保険関係成立届)
- 申請費用:無料(官庁手数料なし。社労士に依頼する場合は別途報酬が発生)
- 概算保険料の申告・納付タイミング(成立日から50日以内)
- 届出後に発生する変更届・廃業届・年度更新の義務
労働保険は労災保険と雇用保険の総称です。それぞれ届出先と様式が異なるため、本記事では2つの手続きをまとめて解説します。
労働保険の加入届が必要なケース
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)第4条の2に基づき、労働者を1人でも雇用した日に保険関係が自動的に成立し、10日以内に届出義務が生じます。
届出が必要なケース
- 個人事業主・法人を問わず、労働者(アルバイト・パート含む)を1人でも雇用した場合
- 週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある従業員がいる場合(雇用保険)
- 日雇い労働者や短時間労働者でも、労災保険の対象者がいる場合
届出が不要なケース
- 個人事業主本人のみ・同居親族のみで事業を行い、外部の労働者を雇用していない場合
- 農林水産業の暫定任意適用事業(5人未満の個人経営等)で任意適用を選ばない場合
- 国家公務員・地方公務員(別制度が適用される)
重要 アルバイト・パートであっても労災保険の適用除外はありません。1日だけ雇った場合でも届出が必要です。雇用契約書の有無に関わらず、実態として労働力を使用した瞬間から届出義務が生じます。
労働保険の加入が必要な業種ページ
届出をしなかった場合の罰則
労働保険徴収法第46条第1号に基づき、届出義務を怠った場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります。
遡及徴収のリスク: 届出をしていない期間に労働者が業務上の負傷・疾病を発症した場合、労災保険から保険給付は行われますが、後日事業主に**費用の全部または一部が徴収(遡及徴収)**されます。
追徴金: 未加入期間の遡及徴収は、保険料に加えて追徴金(本来の保険料の10%)が上乗せされます。
重要 「まだ開業したばかりだから」「少人数だから」という判断は通用しません。1人目の雇用日から10日以内に届出を完了させることが法定義務です。
申請前の準備
1. 自社の事業形態と適用区分を確認する
労働保険には「継続事業」と「有期事業」の2種類があります。建設業・林業など事業期間が限定されるものが有期事業、それ以外(一般事業所)が継続事業です。
- 一般事業所:労基署へ「保険関係成立届」を提出後、ハローワークへ「雇用保険適用事業所設置届」
- 建設業(有期事業):現場ごとに個別で届出が必要な場合があります
重要 法人でも個人事業でも、従業員を雇った時点から届出義務が発生します。法人登記完了を待つ必要はありません。
2. 必要書類の事前収集
届出に必要な書類は所管官庁(厚生労働省)のサイトからダウンロードできます。「労働保険関係成立届」と「雇用保険適用事業所設置届」を事前に入手し、記入方法を確認しておきましょう。書類はe-Gov電子申請でも提出可能です。
3. 提出先(管轄の労基署・ハローワーク)を確認する
- 労働基準監督署:保険関係成立届・概算保険料申告書の提出先(所轄の労基署)
- ハローワーク(公共職業安定所):雇用保険分の届出提出先(所轄のハローワーク)
所轄は事業所の住所で決まります。厚生労働省のWebサイトで「都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)の所在地」を検索して確認してください。
4. 賃金見込額を事前に計算しておく
概算保険料は「賃金総額(見込み)× 保険料率」で計算します。雇用予定者の月給額と雇用開始日から次の3月31日までの月数を掛け合わせた金額を事前に計算しておくとスムーズです。
必要書類一覧
労働基準監督署へ提出(労災保険分)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 労働保険関係成立届 | OCR用紙。労基署またはe-Govから入手 |
| 労働保険概算保険料申告書 | 保険関係成立日から50日以内に提出・納付 |
ハローワークへ提出(雇用保険分)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 雇用保険適用事業所設置届 | 設置日の翌日から10日以内に提出 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険対象者ごとに提出。資格取得日翌月10日まで |
| 労働者名簿または出勤簿 | 添付書類として提出する場合あり |
| 賃金台帳 | 同上 |
個人事業主の場合に追加で必要なもの
- 事業の実態を確認する書類(営業許可証のコピー等)
- 事業所の所在が確認できる書類(賃貸借契約書等)
重要 雇用保険の対象者は「週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」がある労働者です。この要件を満たさないアルバイト・パートは雇用保険届出不要ですが、労災保険は全員対象です。



届出書の記入で特に注意すべき項目
保険関係成立届の記入でよくミスが起きる項目:
- 事業開始年月日:会社設立日ではなく「最初の労働者を雇用した日」を記入します。設立登記日と雇用開始日が異なる場合は雇用開始日を記入。
- 賃金見込額(概算):成立日から次の3月31日まで(保険年度末)の賃金総額の見込みを記入。過小申告は不足額の追徴対象となります。余裕を持って計上することを推奨します。
- 事業の種類(業種コード):業種コードの選択ミスは保険料率に直結します。厚生労働省が公表する「労働保険料の計算に用いる事業の種類」で正しいコードを確認してください。
- 事業の場所の名称:登記上の名称ではなく、実際に労働者が働く事業場の名称を記入します。
重要 労働保険の手続きは社会保険労務士の独占業務(社労士法第2条)です。書類作成を外部に依頼する場合は、必ず資格を持つ社労士に委託してください。無資格者への依頼は違法となります。
申請の流れ(STEP1〜5)
STEP 1:保険関係成立届の準備(目安:1〜2日)
「労働保険関係成立届」(OCR用紙)を厚生労働省HPからダウンロードし、事業主名・所在地・労働者数・賃金見込額等を記入します。e-Gov電子申請でのオンライン提出も可能です。
STEP 2:労働基準監督署へ提出(目安:当日受付)
雇用日から10日以内に、所轄の労働基準監督署へ保険関係成立届を提出します。窓口提出・郵送・e-Gov電子申請のいずれかで対応。受付後、「労働保険番号」が付番されます。
STEP 3:概算保険料申告書の提出・納付(目安:成立日から50日以内)
保険関係成立日から50日以内に労働保険概算保険料申告書を提出し、概算保険料を納付します。納付は金融機関・コンビニ・口座振替・電子納付に対応。40万円以上の場合は3期分割納付も可能です。
STEP 4:雇用保険適用事業所設置届の提出(雇用保険対象者がいる場合)
設置日の翌日から10日以内に所轄ハローワークへ提出。STEP2で取得した「労働保険番号」を記入します。受付後に「事業所番号」が付番されます。
STEP 5:雇用保険被保険者資格取得届の提出
雇用保険対象者(週20時間以上・31日以上)ごとに、資格取得日翌月10日までにハローワークへ提出します。「被保険者番号」が付番され、対象者本人の雇用保険加入が完了します。
費用と審査期間
| 項目 | 自分で手続き | 社労士に依頼 |
|---|---|---|
| 官庁手数料 | 無料 | 無料 |
| 社労士報酬 | なし | 約29,800円(事務所により異なる) |
| 手続き期間 | 雇用日から10日以内(法定期限) | 委託後1〜5日で提出代行 |
| 書類作成 | 事業主が記入 | 社労士が作成・確認 |
概算保険料(労災・雇用保険料)は別途発生します。 保険料は「賃金総額 × 保険料率」で計算。業種によって料率が異なります(飲食店では労災保険料率:6/1000、雇用保険料率(事業主分):9.5/1000程度)。
月給25万円の従業員1名を雇った場合の年間概算保険料の目安(飲食店):
- 労災保険料:250,000円 × 12ヶ月 × 6/1000 = 18,000円/年
- 雇用保険料(事業主分):250,000円 × 12ヶ月 × 9.5/1000 = 28,500円/年
労働保険料の計算方法と年度更新
概算保険料の計算式
概算保険料 = 賃金見込総額 × 労働保険料率(労災保険料率 + 雇用保険料率)
| 業種 | 労災保険料率 | 雇用保険料率(事業主分) |
|---|---|---|
| 飲食店・食料品販売 | 6/1000 | 9.5/1000 |
| 一般小売業 | 3/1000 | 9.5/1000 |
| 建設業(建築) | 9.5/1000 | 9.5/1000 |
※2024年度の料率。毎年度改定されるため、厚生労働省HPで最新値を確認してください。
年度更新(毎年6月1日〜7月10日)
毎年6月1日〜7月10日に「年度更新」手続きが必要です。前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付します。
重要 概算保険料は「見込み額」で先払いし、年度末(3月31日)に実際の賃金総額をもとに確定保険料で精算します。不足分は追加納付、超過分は翌年度の概算保険料に充当または還付されます。
労働保険の加入届 詳細ページ
よくある失敗パターン5選
失敗1:雇用日から10日を過ぎてから届出した → 遅延扱いとなり、遡及期間の保険料+追徴金(10%)が課される場合があります。開業前から「1人目の採用が決まった日」を起点にカレンダーを確認しましょう。
失敗2:業種コードを誤って記入した → 業種コードは労災保険料率に直結します。小売業を飲食業と誤記した場合、保険料差額を遡及徴収されることがあります。厚生労働省の業種コード表で必ず確認してください。
失敗3:概算保険料を過小申告した → 賃金見込額を低く見積もると、年度更新時に不足額を追徴されます。採用予定が増える見込みがある場合は多めに計上することを推奨します。
失敗4:雇用保険対象者の届出を忘れた → 週20時間以上の従業員がいるのにハローワークへの届出を忘れるケースが頻発します。後日発覚した場合は、遡及加入手続きと未申告期間の保険料徴収が行われます。
失敗5:社会保険(健康保険・厚生年金)と混同した → 労働保険(労基署・ハローワーク)と社会保険(年金事務所)は届出先・書類・期限が異なる別制度です。労働保険は10日以内、社会保険は5日以内と期限が異なるため、同時にスケジューリングしてください。
電子申請(e-Gov)の活用
政府が提供する「e-Gov電子申請」を利用することで、窓口に出向かずにオンラインで届出が可能です。
対応している手続き
- 労働保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
利用の流れ
- e-Govアカウントを作成(無料)
- GビズID(法人)または個人アカウントでログイン
- 手続き検索で対象の届出を選択
- 必要事項を入力して送信
e-Gov申請の場合、受付完了通知がメールで届くため、窓口の混雑状況に左右されません。社会保険の手続きと合わせて電子申請することで、書類の散逸リスクも減らせます。
継続事業の一括認定(複数事業場がある場合)
複数の事業場を持つ法人で、本社が一括して労働保険を管理したい場合は「継続事業の一括認定申請」が可能です。
- 本社(主たる事業場)でまとめて申告・納付できる
- 各支店・工場ごとに個別手続き不要
- 申請先:都道府県労働局長
業種や事業規模によって条件があるため、所轄の労働基準監督署に事前確認をお勧めします。業種が混在している(例:本社が小売業・支店が飲食業)場合は一括認定の対象外となることがあります。
社会保険との同時手続き
法人が従業員を雇用した場合、労働保険(労基署・ハローワーク)と社会保険(年金事務所)の両方の届出が必要です。
| 手続き | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 雇用日から10日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 設置日翌日から10日以内 |
| 健康保険・厚生年金新規適用届 | 年金事務所 | 事実発生から5日以内 |
重要 社会保険の届出期限は「5日以内」で、労働保険(10日以内)より短いです。両者を同時に進めることで手続きの漏れを防げます。
届出後の義務(変更届・廃業届)
変更が生じた場合の届出
以下の事項に変更が生じた場合は、速やかに変更届を提出します。
- 事業主の住所・名称変更:所轄労基署へ変更届
- 業種変更:保険料率が変わるため、速やかに届出
- 代表者の変更(法人の場合):変更届で代表者情報を更新
掲示義務(有期事業の場合)
建設業等の有期事業の場合、事業場の見やすい場所に「保険関係成立票」を掲示する義務があります(労働保険徴収法施行規則第4条)。掲示内容には保険関係成立年月日・概算保険料申告書の提出年月日等を記載します。
継続事業(一般事業所)の場合は法定掲示義務はありませんが、労働者に対して労働保険に加入していることを周知することが推奨されます。
廃業・全員解雇時の廃止届
事業を廃止した場合は確定保険料申告書を提出し、不足分の保険料を納付または超過分の還付を受ける必要があります。廃業日から50日以内に手続きを完了させてください。
まとめ:労働保険の加入届をスムーズに進めるために
労働保険の加入届は、従業員を雇った日から10日以内という厳格な期限があります。開業準備の段階から以下のポイントを押さえておきましょう。
- 雇用が決まったらすぐに書類を準備する(雇用日待ちは危険)
- 労基署とハローワークの所轄を事前確認しておく
- 社会保険(年金事務所)との同時手続きをスケジューリング(期限:5日以内)
- 業種コードと賃金見込額を正確に記入する
- e-Gov電子申請を利用してオンライン提出する方法も検討する
手続きに不安がある場合は、社会保険労務士への相談が有効です。社労士は労働保険・社会保険の手続き代行を行う専門家であり、正確かつ迅速な届出が期待できます。費用は初回の新規加入手続きで2〜5万円程度が目安です(事務所により異なります)。
許認可ナビ編集部
行政書士・法務専門家と連携し、許認可・行政手続きの正確な情報を提供しています。掲載内容は官公庁の公式情報をもとに作成し、定期的に更新しています。
最終更新:2026年4月29日
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